オプトメトリストの時間

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スーザンに降った初めての雪

Susan's First Snowfall

映画「レナードの朝」(1990年)で知られる有名な作家、ドクター・オリバー・サックスが偶然出会った大学教授スーザン・バリーさん。

Suzan Barry


彼女は内斜視で、今まで立体視というものを体験したことがなかったのです。
しかし、ビジョントレーニングにより、それは変わりました。
この素晴らしい体験について、ドクター・オリバー・サックスが雑誌ニューヨーカーに記事を書いたことは、8/5(日)のブログでご紹介しました。
今回はその体験について、NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)でバリーさんが語った話をまとめてみました・・・。


スーザン・バリーさんはドクター・オリバー・サックスと数年前のパーティで偶然会い、話し込んでいるうちに、自分が内斜視で、生まれてから一度も両方の眼を一緒に使ってものを見たことがなく、立体視という感覚がないことを伝えたのです。

サックス:「ふたつの目を使って見るということはどんなことか想像できますか?」
バリー:「もちろんです」「自分に何が見えていないかも知ってる・・・つもり・・・なんですけど」。

しかし、その後しばらくして、ドクター・サックスは彼女から「私は間違っていました・・」という言葉で始まる、9ページに渡る手紙を受け取り、これがきっかけで彼女を取材し、雑誌に記事を書いたのです;


バリーさんは大学生のとき、ノーベル賞(1981年)を受賞したヒューベル博士と ヴィーゼル博士の子猫を使った有名な研究について学んでいました。

これは、生まれたばかりの子猫のまぶたを縫い合わせ、数ヶ月間後に抜糸したところ、立体的に見る機能が失われており、その後この機能は二度とあらわれることはなかったというのです。
従って、立体視を得るためには、生後一定の《期間》までに脳の両眼視細胞に適切な刺激が与えられることが必要であるとされました。この重要な《期間》を「臨界期」あるいは「感受性期」としたのです。
まったく同じことが人にも起こりうる、と考えられているのですが・・・。

子どものときに二度の内斜視手術を経験し、これまで数多くのドクターから「これ以上何もできない。むしろ物がふたつにダブって見えないのはラッキーな方だ」というようなことを繰り返し聞かされてきたのです。

バリー;「私は運転できますし、テニスだってできる。でも、50才に近づいてきた最近、例えばテニスをしていると、ネットの向こうのプレイヤーが、微妙に左右にシフトするように見えるようになったんです。これは、ふたつの目を交代に使って見ていたからだということに気がつきました。」

こういった体験から、やはりなんとかしたいと思うようになり、ついにオプトメトリストのドクター・ルジェロと出会いました。

そして、ドクターの指導でビジョントレーニングを始めたのです;

バリー;「トレーニングを始めて3週間目の朝、車に乗ったとき、突然目の前にあるハンドルがダッシュボードから浮き上がって見えるのに気がついたんです!」
「このような絵は見たことがなかったので、信じられませんでした。こんなことありえないと思いました」
バリー;「次の日も車に乗ると、今度はリアビューミラーが浮き上がって見えているんです!」
「生まれて50年たった今、初めて、立体視の感覚を手に入れたのです」

彼女は2才の時最初の内斜視手術を受けたものの、立体視はなく、「臨界期」内に両眼を一緒に使える状態ではなかったはず。
50才の脳が、突然そんなふうに変わってしまうことはあるのだろうか?

しかし、ヒューベル博士でさえこう言います;
「バリーさんがひとつの可能性を求めてあきらめないでいたことが、彼女に素晴らしい結果をもたらしたのだと思う」

何故なのか?
考えられることは、バリーさんが赤ちゃんのとき、両眼視を発達させるほんの一握りの細胞の土台ができており、ビジョントレーニングによって、これらの細胞が目を覚ました、のでは、と専門家たちは考える。

なにはともわれ、あきらめず、正しいドクターを選択し、ドクターの指示をよく守ったバリーさんは、彼女が想像することもできなかった世界に足を踏み入れることができた。

と、ある日のランチタイム、雪が降ってきたので、バリーさんは外へ出てみました。

バリー;「それは、ゆっくりと降りてくる、どちらかというと厚みのある雪でした」
「私は、雪と雪のあいだの空間を感じることができ、三次元の美しい雪のダンスを見ることができました。そして初めて、降雪の中に居る自分を感じることができたのです」

「こんな情景は見たことがありません」

「私はランチのことをすっかり忘れ、ただそこに立ち、雪を見ていました・・・」


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